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2018/03/29

動物からヒトに感染する「動物由来感染症」 過度な接触に注意を

この記事の監修/執筆

Mocosuku編集部

動物からヒトに感染する「動物由来感染症」 過度な接触に注意を

福岡県に住む60代女性がネコから感染したとみられる「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」により死亡していたと、先ごろ厚生労働省が発表しました。
日本国内におけるこの感染症の死亡例は初めてのことで、厚生労働省では都道府県などに対し動物由来感染症への注意喚起を呼びかけています。
ペットを家族のように飼育する人が増加する一方、こうした感染症にも注意を払わなければなりません。
今回は「動物由来感染症」について、詳しくご説明いたします。

動物由来感染症とは

動物から人に感染し、動物と人に共通する感染症の総称を「動物由来感染症」といいます。
「人畜共通感染症」あるいは「人獣共通感染症」、「zoonosis(ズーノーシス)」と表わす場合もあります。
医学(人の感染症)と獣医学(動物の感染症)にまたがる医療分野です。
世界では今でも新しい感染症がたくさん発見されていますが、その多くが動物由来感染症であることがわかってきました。
なかには「強い感染力をもち重症化する」「治療法がない」「ワクチンが実用化されていない」といった病原体もあります。
たとえば、エボラ出血熱(※1)、SARS(重症急性呼吸器症候群)(※2)、マールブルグ病(※3)などが挙げられます。
世界保健機構(WHO)は200種類以上もの動物由来病が存在すると述べていますが、日本で発症しているのは数十種類程度とされています。

※1 NID国立感染所研究所『エボラ出血熱とは』
※2 NID国立感染所研究所『SARS(重症急性呼吸器症候群)とは』
※3 NID国立感染所研究所『マールブルグ病とは』

動物由来感染症の伝播様式

動物由来感染症において、病原体が動物から人間にうつること、その過程も含め「伝播(でんぱ)」といいます。
大きく「直接伝播」と「間接伝播」の2種類に分類できます。

直接伝播

動物に「咬まれる」「ひっかかれる」「糞便に触れる」「口や傷口をなめられる」などで感染します。
動物の咳やくしゃみを直接受けて感染する病気もあります。
狂犬病、トキソプラズマ症、サルモネラ症、オウム病、そして冒頭で触れた福岡の事例コリネバクテリウム・ウルセランス感染症などが挙げられます。

間接伝播

動物と人間との間に存在する何らかの介在物により感染します。

◆ベクター媒介
 ダニや蚊、ノミやハエなどのベクター(媒介)が病原体を運び感染する。
 日本脳炎、デング熱、ペスト、腸管出血性大腸菌感染症など

◆環境媒介
 動物の体から出た病原体が水や土を介して感染する。
 破傷風、炭疽、クリプトスポリジウム症など

◆動物性食品媒介
 畜産物など食品の汚染により感染する。
 サルモネラ症、アニサキス症、ノロウィルス感染症、カンピロバクター症など

このように、野生動物、動物園などの展示動物、家畜、ペットなどが動物由来感染症の感染源になることがあります。
野生動物は別として、飼い主や管理者は予防や対策を十分に講じて、伝播を食い止める措置をしておくことが大切です。

日常生活における注意点

厚生労働省では「動物由来感染症ハンドブック2017」を公開し、次のような注意喚起を呼びかけています。


・犬の予防注射と登録等。飼い主には狂犬病予防法による義務が課せられている
・動物に触ったら、必ず手洗い等をおこなう
・過剰な触れ合いは控える。とくに口移しでエサを与えること、スプーンや箸の共用、動物を布団に入れて寝ることに注意する
・動物の身の回りを清潔にする。ブラッシングや爪切り、寝床を清潔に保つ、鳥かごの掃除、タオルや敷物、水槽などの洗浄を奨励
・糞尿は速やかに処理する
・室内における鳥の飼育は換気を心がける
・砂場や公園で遊んだら、必ず手を洗う。直接動物に触れなくても動物が排せつをしがちな砂場や公園で遊んだ場合は注意する
・野生動物の家庭での飼育、野外での接触を避ける。とくに野生動物はどのような病原体をもっているかわからない、また、その肉などを食べるのも要注意

動物由来感染症にまつわる法律

日本では「感染症法(正式名称:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)」という法律が施行されています。
動物由来感染症ではほかに「狂犬病予防法」や「検疫法」が関ります。
「感染症法」では現在リスクの高い順に1~5類に分類しそれぞれの対処法が定められています。
医師や獣医師は、この法律に従い患者や動物の診断時は保健所に届出をする義務があります。

日本が世界的にみて動物由来感染症の数が少ないのは、温帯で島国という「地理的要因」、安全衛生対策の徹底、国民の強い衛生観念などが理由でしょう。
しかし、旅行や輸入などで海外の動物由来感染症に接する可能性がある、ということには誰もが注意しなくてはなりません。
とくに輸入に関しては、感染症法に基づき輸入禁止、輸入検疫、輸入届出の3種類の制度があり、対象動物も定められています。
また、動物由来感染症にかかっていても、症状が他の病気、風邪やインフルエンザ、皮膚病などに似ていて気づかず、発見が遅れるケースもよくあるといいます。
冒頭の福岡県での事例も同様です。

ペットや家畜などと接する機会の多い人はとくに気をつけて、不調を感じたら早めに受診をするよう奨励されています。
また、動物の定期健康診断受診や病気の早期発見にも気をつけるよう注意を呼びかけています。
「ペットには縁がない」という人も、無関係と思わず知識として備えておくとよいでしょう。

【参考】
・毎日新聞『猫からの感染症 16年国内初の死亡例 福岡の60代女性』
・厚生労働省『動物由来感染症を知っていますか?』
・厚生労働省『動物由来感染症ハンドブック』
・NID国立感染症研究所『動物由来感染症対策』


<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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