停留精巣

改善しない停留精巣は1歳を目安に治療を

男の子の先天的異常としてはいちばん多いものの一つとされている「停留精巣」。新生児男児の約3%に認められる異常です。停留精巣とはどのようなものなのでしょう?停留精巣がおこる体のしくみや治療時期の目安および治療方法をご紹介します。

停留精巣が発症するしくみとは?

停留精巣とは、陰嚢(いんのう)の中に精巣を触れない状態をいいます。陰嚢内に精巣を触れない、とはどのような状態で、なぜ起きるのでしょう?
男の子の生殖器である精巣は、女の子の卵巣に相当するものです。どちらも「生殖腺」と呼ばれ、もともとは同じものとして発生するため、妊娠2か月くらいまでは男女の区別がつかない状態です。女の子の生殖腺(卵巣)は動かずにそのまま成長するのに対し、男の子の生殖腺(精巣)は妊娠3か月から9か月頃にかけて、成長とともに移動します。性ホルモンなどの働きにより、お腹の中から鼠径管と呼ばれる通り道をしだいに下降し、陰嚢の中へとおさまるのです。しかし、その下降の途中で何らかの原因により、片方、もしくは両方の精巣が止まってしまい、陰嚢の中へと降りてこないまま出産となった状態が停留精巣です。なぜ下降が止まるのかは、諸説ありますが、正確な原因はまだ不明とされています。
新生児の約3%に認められる異常ですが、早産で生まれた場合、また体重が軽く生まれた赤ちゃんは発生頻度があがり、約30%に認められるとされています。

停留精巣の治療は1歳での状態が目安

停留精巣は、陰嚢の中に精巣を触れないこと以外に特に症状はありません。乳児健診で、医師が陰嚢の触診をすることによって見つかりますが、中にはおうちの人が気づく場合もあります。陰嚢を触っても中にコロコロとした精巣の部分を感じないことや、左右の陰嚢の大きさが違うことなどが特徴です。
また、ふだんは精巣が陰嚢内におさまっていなくても、お風呂のあとなどのリラックスした状態の時には陰嚢内に降りてくるケースがあり、それを「移動性精巣」と呼びます。移動性精巣は、生まれて間もない赤ちゃんにはよく見られる症状ですので、特に治療は必要なく、1歳を迎えるあたりまでに自然と治る場合があります。
停留精巣か、移動性精巣かの判断は難しく、小児外科医や小児泌尿器科医に相談し、正確な診断のもとにその後の治療方針を立てていくことが重要視されています。精巣は成長とともに自然に下降してくることが多く、1歳を迎えるころには1%程度にまで減少します。
しかし、1歳を過ぎると自然に下降することがなくなるため、治療が必要となります。

停留精巣の治療方法とは

1歳を過ぎると、精巣が自然に下降することはなくなるため、治療が必要となります。精巣がお腹の中に停留したままだと、大人になるにつれてさまざまな支障が生じてしまうためです。ひとつは、成人してから癌(がん)の原因になってしまう危険性を含んでいると言われています。そしてもうひとつは、そもそもなぜ男の子の精巣がお腹の中から陰嚢に移動するのか?という部分につながるお話になります。

思春期を迎え、精巣内で精子を作りだすとき、体温より2~3℃低い環境がなければ、精子を作る細胞がうまく機能せず精子の数も減少してしまいます。これは哺乳類の多くに共通しており、精子の形成には涼しい環境が必要なため、体内より少しでも温度の低い陰嚢まで降りてくるという生命のしくみなのです。陰嚢内は約33℃、一方お腹の中は約37℃あるとされています。したがって、温度の高い体内に精巣が停留したままでは、将来、不妊の原因になることもあるため、早いうちに治療が必要となるのですね。

では、停留精巣にはどのような治療がおこなわれるのでしょうか。
ほかに病気がなく元気な場合は、1歳になった頃から1歳半頃までに治療をおこなうことが推奨されています。上記に述べたような精巣癌や不妊のリスクを少しでも低くするためです。治療には主に2つの方法があります。精巣の下降に必要な性ホルモンを長期的に投与するホルモン療法と、精巣を陰嚢内に固定する精巣固定術と呼ばれる手術療法です。ホルモン療法は、停留精巣の場所によっては精巣下降率が低いこと、また長期に渡るホルモン投与への安全性が確立していないことから、日本では精巣固定術が標準の治療となっています。手術は下腹部を約3センチ、陰嚢を約1センチ切開します。通常1時間から2時間の所要時間で終わり、難しい手術ではありませんが、入院が必要です。抜糸の不要のことが多く、成長とともに傷はほぼわからなくなると言われています。以前は、5歳くらいまでの治療が望ましいとされていた停留精巣ですが、精巣の機能を守るため、現在は遅くても2歳までに治療することがすすめられています。


2015/11/19

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