重症筋無力症

2015/10/20

「重症筋無力症」の原因や症状とママにできる治療法

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「重症筋無力症」の原因や症状とママにできる治療法

重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉のつなぎ目において、神経からの信号がうまく伝達されないために筋肉が十分に動かなくなる病気です。日本では難病に指定されているまれな自己免疫疾患で、2006年の調査では全国に約1万5千人の患者さんがいます。今回は、重症筋無力症についてご説明します。

重症筋無力症とはどんな病気か?

重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の神経伝達物質受容体が抗体によって損なわれるために、筋力低下が起きる自己免疫疾患です。人間は、細菌やウィルスなど外から入ってくる病原体に抗体を作ることで、病気を予防したり治したりする免疫機能を持っています。しかし、免疫機能に異常が起きて、自分の体と外から侵入する病原体を区別できなくなり、自分の体に対して抗体を作り自分の体を攻撃してしまうのが自己免疫疾患です。

重症筋無力症はまれな病気で、30歳代~50歳代の女性に多く見られますが、日本では5歳未満の小児にも多いことが特徴です。なお、新生児筋無力症は、重症筋無力症の女性から生まれた場合に、妊婦の胎盤を通じてまれに起こる一過性の筋力低下です。生後数日から数週間で症状が消えます。

重症筋無力症の症状

一般に、まぶたが下がったり、眼球の動きも鈍くなり、ものが二つに見えたりします(眼筋型)。また、筋力の低下が全身に起こり、手足に力が入らなかったり、声が出なくなったり、ものを飲み込めなくなったりするケースもあります(全身型)。重度な場合は、呼吸器の筋肉に筋力低下が起こり、生命の危機に陥ることもあります。重症筋無力症では、筋肉を繰り返し動かすと筋力が低下し、しばらく休むと筋力が戻り、また筋肉を使うと再発します。筋力低下の度合いは時間や日によって異なり、人によって病気の経過も異なります。小児の場合は眼筋型が多く、朝はよくても夕方にはひどくなる日内変動が起こるのが特徴です。

重症筋無力症の原因

神経筋接合部の筋肉側には、神経伝達物質の受け手である神経伝達物質受容体という分子があります。この受容体が自己抗体によって破壊され、神経からの信号が筋肉に伝達されなくなるために筋力低下が起こります。重症筋無力症全体の約85%がアセチルコリン受容体で発症し、全体の数%が筋特異的受容体型チロシンキナーゼ、残りの10%未満がその他の分子で発症しています。自己抗体が体内で作られる原因はよくわかっていません。ただし、抗アセチルコリン受容体抗体を持つ多くの患者が、胸腺腫や胸腺過形成などの胸腺異常の合併症を持つことから、胸腺との関係が疑われています。

なお、重症筋無力症は遺伝しません。まれに遺伝型の先天性筋無力症候群がありますが、これは神経筋接合部の特定の分子が遺伝子変異することによって起こります。自己免疫性疾患である重症筋無力症は遺伝しません。

重症筋無力症の治療法

神経から筋肉への信号伝達を強くする対症療法と自己抗体の生成を抑制する免疫療法があり、症状や状態によって選択され、組み合わせられます。対症療法の場合は、アセチルコリン濃度を高めるコリンエステラーゼ阻害薬という内服薬が用いられます。免疫療法の場合は、免疫力を抑えるステロイド薬・免疫抑制薬の内服や点滴が用いられます。重症のケースでは、フィルターによって血液中の抗体を取り除く血漿交換が行われることがありますが、小児の場合はまれです。

ママにできること

早期発見・早期治療によって多くの場合は回復します。小児の場合は眼筋型が多いため、朝はよくても夕方になるとまぶたが下がり、「テレビを見るときに頭を後ろに反らす」、「物を見るときに首を傾ける」などの症状で気づきます。そのほか、夕方になると鼻声になったり、食事でむせたりするなど、日内変動にともなう全身型の筋力低下が見られる場合も、病院を受診しましょう。担当は小児神経(内)科、または神経内科です。心療内科や精神科ではありません。


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