甲状腺の異常

妊娠中にみられる甲状腺の異常と母体・赤ちゃんへの影響

妊娠初期には一過性ではありますが甲状腺機能亢進の症状が現れることがあります。また、妊娠前から甲状腺機能亢進の症状があることも考えられます。甲状腺の異常が出た場合、妊娠にどのような影響を与えるのでしょうか。さらに、その他の甲状腺の異常における母体や赤ちゃんへの影響について紹介します。

妊娠初期にみられる一過性の甲状腺機能亢進症とは

妊娠初期、8~15週頃には一過性の甲状腺機能亢進症になることがあり、妊娠前には甲状腺に異常のなかった人にもみられます。理由は、hCGという胎盤から出るホルモンが甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの分泌を増やすためです。つわりの強い人に多くみられ、もともと甲状腺に全く異常がない人でも発症します。

甲状腺機能亢進症とは

甲状腺機能亢進症はバセドウ病とも呼ばれ、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている状態です。多汗や動悸、手の震えや疲れやすさ、体重減少などさまざまな症状が現れます。特徴としては、一つの症状ではなく、複数の症状が一度に現れ、一週間以上続くことです。
また、パニック症状や自律神経失調症に似た症状を呈するため鑑別も重要になります。
甲状腺の疾患は女性に多く、甲状腺機能亢進症の代表的な疾患であるバセドウ病の発病頻度は女性の場合、男性のおよそ4倍です。

妊娠初期の甲状腺機能亢進症の対処法

妊娠初期にみられる甲状腺機能亢進症は、多くは一時的なもので妊娠週数が進む中で症状は治まってきます。しかし、甲状腺機能亢進の症状が重い場合には無機ヨード剤などを用いた治療が必要なこともあります。

妊娠前からのバセドウ病による甲状腺機能亢進症が持続した場合

もともとバセドウ病がある場合、症状は妊娠に伴い落ち着くといわれていますが、きちんと治療を受けて甲状腺機能を正常なレベルに保つことが重要です。治療を受けず甲状腺機能亢進症が持続していると流産や早産、また妊娠高血圧症候群などのリスクが高くなるという指摘もありますので注意しましょう。

出産後は、新生児に一過性の甲状腺機能亢進症が現れることが予想されるため、多くの病院で産科と小児科が連携した管理を行っています。 一方で、甲状腺ホルモンは子どもの成長に重要なホルモンです。そのため、すべての新生児に対し甲状腺機能低下症のスクリーニングが行われています。

その他の甲状腺の異常と妊娠との関係について

▼慢性甲状腺炎が妊娠にもたらす影響
慢性甲状腺炎は甲状腺の慢性炎症によって甲状腺に機能異常が起こる病気です。発見した博士の名前から橋本病と呼ばれています。
慢性甲状腺炎は甲状腺機能が正常域のときには症状がなく、甲状腺ホルモンが不足すると寒がりになる、顔や手足がむくみ、便秘気味になるなど甲状腺機能低下の症状が現れます。
慢性甲状腺炎は妊娠の経過に悪影響を及ぼすことはありません。しかし、甲状腺機能低下がある人は甲状腺ホルモン剤を服用し、血中のTSH(甲状腺刺激ホルモン)を正常なレベルに保つようにしましょう。

▼甲状腺機能低下症が妊娠にもたらす影響
海外の研究において、母親の甲状腺機能低下症が軽度の場合でも将来的に子どもの知能に影響を与えるという報告があります。日本の母親において同様の結果になるのかは明確ではありませんが、妊娠中に母体の甲状腺機能を正常化しておくことは重要です。

甲状腺機能低下症の治療に使用される甲状腺ホルモン剤は定期的な検査で量を調節することによって妊娠期にも授乳期にも服用することができます。甲状腺ホルモン剤は適切な服用であれば胎児への悪影響を心配する必要はないといわれている薬剤です。
しかし、妊娠中の服用が不安な場合には医師に相談しつつ、必要な治療を受けましょう。


2015/11/17

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