インフルエンザ

2015/11/20

妊娠中のインフルエンザがママと赤ちゃんに及ぼす影響とは?

この記事の監修/執筆

産婦人科医/女医+(じょいぷらす)風本 真希

妊娠中のインフルエンザがママと赤ちゃんに及ぼす影響とは?

冬に近付くにつれ、毎年インフルエンザが流行します。妊婦さんは、妊娠していない人と比較すると免疫力が低下しており、インフルエンザに感染すると重症化する可能性が高いということをご存知ですか?ここでは、気を付けておきたいインフルエンザがママに及ぼす影響と赤ちゃんに及ぼす影響を詳しく解説していきます。

インフルエンザの基礎知識

・インフルエンザとは

インフルエンザは通常の風邪と異なり、全身症状が見られるウィルス性の感染症です。
38℃以上の発熱・頭痛・関節や筋肉の痛み・全身の倦怠感などの症状が急速に出る他、のどの痛みや鼻汁・咳といった通常の風邪と同じ症状も伴います。
小さな子どもや高齢の方は重症化しやすいので、注意が必要です。

・インフルエンザの流行時期

日本においては12月~3月がインフルエンザが流行しやすい季節です。流行が始まると、短期間に多くの人に感染が拡大します。

・インフルエンザの検査(検査方法と正しい結果が出るタイミング)

主に病院などで行われるインフルエンザの検査では、「迅速診断キット」と呼ばれる検査器具を用います。
鼻やのどの粘膜を綿棒のようなもので拭うだけで行える、簡単な検査です。
キットはA型とB型のどちらの型にも対応していて、15分以内に検査結果が出ます。ただし、発熱などの症状が出始めてから12時間経過しないと検査で陽性にならないことが多いので、できるだけ発症後12時間以降に検査を受けましょう。

妊娠中のインフルエンザは重症化しやすい

妊娠中のママの体は、一般の妊娠していない人と比べると免疫力が弱いためインフルエンザに感染すると重症化しやすくなっています。また、感染した際には抗インフルエンザウィルス薬を適切に使用しなければ重症化し、心肺機能が悪化して入院するリスクが高まります。統計によると妊婦さんがインフルエンザで重症化した場合に集中治療室に入る割合は、妊娠していない人の約10倍にもなることが分かっています。(※1)

妊娠中のインフルエンザ感染は、赤ちゃんに影響を与えるのか?

・厚生労働省は「赤ちゃんには影響なし」と発表

厚生労働省の報告によると、季節性のインフルエンザも新型インフルエンザも、母体が感染してもほとんどの場合胎児に直接影響することはないとされています。
ただし、非常に稀な確率で、季節性インフルエンザウィルスが胎盤を通じて胎児に影響したという報告があります。

妊娠中のインフルエンザ感染の治療

・妊娠中でも抗インフルエンザウイルス薬は使用できます

妊娠中でも、医師の判断によってタミフルやリレンザなどの抗インフルエンザウイルス薬が処方されます。どちらを使うかは、医師が判断します。どちらの薬についても「胎児に悪影響を及ぼさない、重大な可能性を及ぼす可能性は少ない」とされています。

・タミフルの飲み方と効果

タミフルは飲み薬です。体内で吸収され、血液を介し全身を巡ります。
インフルエンザの治療に用いる時は、1回に1カプセルを1日2回、5日間飲み続けます。
また、インフルエンザの予防に用いる場合には、1回に1カプセルを1日1回、7〜10日間飲み続けます。ただし、予防投与の場合は保険は適用されないので、全額自己負担となります。

・リレンザの使用法と効果

リレンザは吸入薬です。気管支や肺など、局所を中心として作用します。
インフルエンザの治療に用いる場合、1回に2度吸入し、1日2回用います。これを5日間続けて使用します。
予防に用いる場合は、1回に2度吸入し、1日1回用います。10日間続けて使用します。ただし、予防投与の場合は保険は適用されないので、全額自己負担となります。

これらの抗インフルエンザウイルス薬は、発症後48時間以内に用いることが重要です。どちらの薬も指定の日数継続して使用する必要があります。薬の使用により症状が軽くなっても、症状がぶり返すことや、薬が効きにくいウィルスが増えることを避けるために薬の使用を続けましょう。
周囲の人がインフルエンザに感染した場合、妊娠中の方は予防的に抗インフルエンザ薬を用いることができます。ご家族に感染された方がいる場合には、速やかに医師に相談しましょう。

インフルエンザに感染した場合は、早めにかかりつけの産婦人科医に相談してください。

妊娠中でもインフルエンザワクチンは接種できる?

・妊娠中でもインフルエンザワクチン接種可能

インフルエンザワクチンの接種は、感染後の発症の可能性を減らす効果と、発症した場合の重症化予防に有効とされています。WHO(世界保険機構)は妊婦さんをインフルエンザワクチンの優先接種の対象としており、日本でも妊娠している方は優先接種の対象となります。感染してしまった場合でも、事前にインフルエンザワクチンを摂取していた場合は、重症化を防げるとされています。

妊娠中のインフルエンザワクチン接種の安全性

妊娠している方へのインフルエンザワクチンの接種は義務ではありませんが、妊娠中にインフルエンザにかかると重症化しやすいことがわかっているため、ワクチンの積極的な接種が勧められています。 ワクチンは接種後約2週間で効果が表れ、5カ月程度効果が持続すると言われています。妊娠中に季節性インフルエンザワクチンを接種した人は90%の割合で体内で抗体が作られ、胎児にも免疫力が備わることがわかっています。新型インフルエンザにおいても、同様の効果が期待できると言われています。
また、インフルエンザワクチンは、病原体を無毒化した「不活性型」のワクチンですので、胎児への影響はないとされており、いずれの週数でも接種することが可能です。妊娠初期にワクチンを接種しても、流産や先天異常が起こりやすくなったという報告はありません。また、季節性ワクチンと新型ワクチンの同時接種も可能です。

インフルエンザワクチンには、保存剤として水銀由来の成分を含むものがあります。しかし、ワクチンに含まれる水銀量はごく微量であり、母体や胎児への影響は心配ないとされています。ただし、妊娠中の方は保存剤を含まないワクチンを選択することができます。水銀を摂取することが不安な場合は、保存剤不使用のワクチンを希望しましょう。保存剤不使用のものは、妊娠中の方が優先的に接種できるよう産科・婦人科にしか配分されないため、接種の際は注意しましょう。

・インフルエンザワクチン接種のタイミング

日本ではインフルエンザが流行する時期は例年12月~3月頃で、1月~2月に流行のピークを迎えます。
接種したワクチンの効果が出るのはワクチンを接種してから2週間後と言われているため、12月の中旬までにはワクチンの接種を終えることが望ましいです。

妊活中のインフルエンザワクチンの接種

秋〜冬にかけて妊娠を計画している人は、インフルエンザワクチンの予防接種について、かかりつけの医師に相談してみてはいかがでしょう。妊婦さんがインフルエンザワクチンを予防接種した場合の赤ちゃんへの悪影響や副反応は今のところ報告されていません。むしろママに抗体ができることで、胎児にも免疫力が備わることがわかっています。
ただし、インフルエンザワクチンの中には卵成分が含まれているため、卵アレルギーの方はアレルギー反応を起こす可能性があります。

日常生活の中でもインフルエンザ予防を

・手洗い、うがいの徹底

手にウィルスがついている状態で目、口、鼻に触れると感染するリスクが高まります。手洗いはこまめに行いましょう。手を洗う際は、石鹸を使用して指の間や爪の間なども丁寧に洗います。よくすすいだ後に、清潔なタオルやペーパータオルでしっかりと水分を拭き取りましょう。外出先などで手洗いが難しい時には、アルコール消毒液を活用しましょう。
また、うがいも大切です。外出後に帰宅した際は、水でうがいをするようにしましょう。これにより、ウィルス性の風邪の発症率が40%低下すると報告されています。うがい薬を用いる必要はありません。

・規則正しい健康的な生活

インフルエンザは、身体の抵抗力が低下すると感染しやすくなります。抵抗力を高めるためには、十分な休養と栄養バランスのよい食事が必要です。睡眠をしっかりととり、偏食をせずにバランスのよい食事を心がけましょう。

・湿度の調整

乾燥した空気は、気道粘膜の防御機能を低下させてしまいます。乾燥しやすい室内では湿度を50~60%に保てるように、加湿器などを使用して湿度の調整をしましょう。

・外出時のマスク着用

インフルエンザの感染経路は、飛沫感染と接触感染です。ウィルスに感染した人のくしゃみや咳により空気中に吐き出されたウィルスを吸い込むことや、ウィルスがついた物に触れた手で粘膜に触れると感染します。 外出の際は不織布製のマスクをして、空気中のウィルスを吸入することをなるべく避けることが大切です。

・人ごみを避ける

インフルエンザは、ウィルスが存在しない場所では感染することはありません。 インフルエンザが流行する時期の不用意な外出は避け、人ごみにはなるべく近づかないようにしましょう。公共の交通機関を利用する場合は、混んでいる時間帯を避けて乗車しましょう。

<まとめ>

妊娠中にインフルエンザにかかってしまった場合、お腹の中の赤ちゃんに影響がでないか不安になります。
また、インフルエンザの治療薬や、インフルエンザワクチンを使用した場合の影響についても気になることでしょう。 妊娠中にインフルエンザに感染しても直接赤ちゃんに影響はありませんが、インフルエンザが重症化することによる母子へのリスクは考慮しなければいけません。
インフルエンザ感染を予防する措置をとり、もしも感染した場合は医師の指示に従って適切に治療薬を用いることが大切です。


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