ママサポーターズ(女性の仕事・働き方)

2016/04/20

多面的な社員の理解でグローバル化への舵を切る。帝人×イクシル

この記事の監修/執筆

イクシル編集部

多面的な社員の理解でグローバル化への舵を切る。帝人×イクシル

近年多くの企業が「女性の活躍」に向けて取り組んでいます。しかし実際にどのような制度があり、また働いているママ社員・女性社員は何を思っているのでしょうか?「ママサポーターズ」ではそのような疑問を解消すべく、女性の活躍において先進的な取り組みをしている企業とその従業員の声をご紹介をします。

【今回の取材企業】
帝人株式会社
人事総務部ダイバーシティ推進室の日高乃里子(ひだか のりこ)さん (写真左)
帝人株式会社
在宅医療業務部の藤田周子(ふじた しゅうこ)さん (写真右)
【インタビュアー】
イクシル編集部 薮大毅

グローバルな成長戦略17年も前から女性活躍推進の取り組みが始まった帝人株式会社では、取り組み前と現在を比べると女性管理職数が9倍の約90人に増加しています。2014年に「ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれた同社における取り組みを、ダイバーシティ推進室の日高さんと、二人のお子さんを持つ藤田周子さんにお伺いしてきました。

「海外の会社には女性役員がいるのに…」 問題意識から始まった女性活躍への取り組み

薮:かなり早い段階から女性活躍推進に取り組まれていますが、その背景はなんでしょうか?

日高:当時の社長が社業を広げていくなかで、一つのキーワードが「グローバル」でした。海外の会社と重要な会議をする際に海外の会社からは女性役員が出席していましたが、帝人は長い間男性社員のみでした。グローバルに事業展開していく為には女性の活躍が必要だという思いから強いトップダウンで施策が始まりました。
1999年に男女雇用機会均等法、労働基準法の一部改正により、各会社にセクシャル・ハラスメント防止や女性の深夜労働・残業や休日労働の制限撤廃が求められました。そこから一歩進めて女性の活躍推進に帝人は舵を切りました。

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新卒女性採用3割という数字の意味とは?

薮:2001年以来女性の新卒採用を30%以上にするという目標を掲げられていますが、そのような先進的な活動の結果として現状どのくらいの女性が活躍されていらっしゃるのでしょうか?

日高: 30%は、総合職の新卒採用における女性の比率のことです。元々男性の多い会社だったので、女性を15年間30%以上採用していてもなかなか比率は増えなくて現在総合職の中の女性の割合は20%です。
30%という数字には大きな意味があります。理系の修士号、博士号を取得している学生の採用では、女性の学生が少ないので10%前後しか採用出来ませんが、事務系に関しては学生の半分は女性なので、50%の女性が採用できます。そのため、結果的に30%以上の女性は採用出来るようになります。
理論家によれば「マイノリティがマイノリティでなくなるのは3割を超えている場合」と言われているんですね。例えば、自分が講演者だったとすると、30%女性がいることで性別を意識しない話し方ができませんか?でも、それが10人のうち1人しか女性がいない状況では女性を意識しない、男性向けの話をついしてしまうことがあるのではないでしょうか。

薮:確かに話す対象が男性だけの場合と女性がいる場合では話す内容が異なりそうです。3割という数字にはそういった背景があったのですね。

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慣らし保育に配慮するやさしい育休制度

薮:具体的な制度にはどのようなものがあるのでしょうか?

日高:育休は、1歳半までか、1歳を超えて次の4月の末までのうちいずれか、長い期間としています。慣らし保育などの保育環境の変化もあるので4月1日に出社は大変だと考え、4月末にしています。だた、実際には多くの人が平均一年くらいしか休んでいないですね。

藤田:4月は慣らし保育のため、1時間とか2時間で子どもを迎えに行かなければなりません。慣らし保育期間中に復職してしまうと、社員自身にも負担である上に、他の社員の方々にも負担をかけてしまいます。4月末にしてもらえることで子供の保育環境が変わることに専念できます。周りと比べても、4月の1日から出社しなくていいというのはとても恵まれていると感じます。

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職場でブームになっていく!男性の育休取得

薮:男性の育休に関する取り組みはあるのでしょうか?

日高:男性の育休を増やそうと、子供が生まれた男性には全員その月に育休取るようメールをしています。男性社員と男性社員上司に向けてやっているんですね。そうすると、3割の人が一週間程度取るようになりました。人事系からメールが来るとドキっとするのじゃないでしょうか(笑)。

薮:そうですね(笑)。 その取り組みによって、男性のロールモデルが増えていきそうですね。

日高:休み始める人が出てくるとそこの部署がブームになっていって、今神奈川支店が流行っていて、男性が子供が出来たら休むことにしているみたいです。そうするためにもやっぱり属人的な働き方じゃなくてチームで働いて普段から仕事を減らしていくというのが大事なので、そういう意味で働き方のイノベーションが大事だと思うのですね。

藤田:皆が取ると良いですね。自分が育休を取っている間はどうしても周りの社員に負荷がかかってしまいますが、お互い様と思える環境になると取りやすくなると思います。

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昇進が遅れないような制度でママのキャリアを応援したい

キャリアに関する制度は何かありますか?

日高: キャリアに関して、少し工夫をしています。育児休職を利用したことによって、人事考課や昇進について不利益にならないようにしています。昇進に必要な評価のランクを休職に入る前の期の評価が保障されるようにしています。休んだ年には、働いていないので、その分は昇進が遅れてしまうのは仕方ないけれど、それ以上に遅れない工夫をしています。
育児休職をとって、しんどい中で復帰して、頑張っているのに評価されないのはつらいですよね。育児もキャリアも応援したいという考えがあります。

例えば彼女(藤田さん)は、昨年選抜研修に出てもらったんですけど、この推薦基準には、育児中かどうかは考慮していません。子供がいたら忙しくて時間がないのではという「余計な配慮」はしていないんです。子育ても頑張っているからこそ参加欲しいっていう気持ちがあるので。

帝人の考える女性活躍推進=仕事を与えること

薮:今後の取り組みとして、どのようなものを強化していきますか?

日高:育児者の上司の中には「家帰ったら子供の世話が、大変だろうから」と決めつけて仕事を減らしたり、打診もなく出張させなかったりする、優しすぎる上司がいるんですね。 いい仕事をしたいと思って会社に来ているので、そこを誤解しないようにして欲しいと思っています。 私の職務として管理職の教育があるので、そこでは「期待し鍛えてください!」と言っています。女性側からしたら迷惑と思う人もいるかも知れませんが、これが帝人の考える女性活躍のあるべき姿なので、その上で制度を使ってもらえたらいいと思っています。

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先輩や上司の理解があるから続けられる

薮:妊娠、出産、育児というライフイベントで辞められる方がほとんどいないというところが素晴らしいと思いました。何故それが実現出来ているのでしょうか?

日高:制度が整ってきて、それを利用する先輩たちがいるから後輩が仕事を辞めなくて良いと思えます。ロールモデルがいることそして、そこそこ数がいることが重要なんですね。

藤田: 出産や育児を経験された方が多くいると、それが特別なことだとは思わなくなります。 自分よりちょっと上の年齢のお子さんを持った先輩社員の経験談は支えになっています。いずれ子どもも成長するし、自分もちょっとずつ成長していくことが実感できて安心出来ますね。
あとは上司も理解してくれるので夫が早く帰れる時は私が残業をするなど、自分で時間配分をしているのも温かく見守ってくれています。
また、産前と同じ部署で、責任のある仕事を任せてもらえているっていうのもモチベーションにもなります。なんとか貢献したいな、と思って仕事をしています。

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自分のルールで折り合いをつけていく

薮:最後にイクシルを見て頂いている方に仕事と育児を両立していく上でのメッセージ、アドバイスを頂けますと幸いです。

藤田:両立の出来る方々にメッセージなど大それたことは何も出来ていないのですけど…。あまり深く考えすぎずに、やってみると結構頑張れるということは感じます。頑張っているとサポートしてくれる人も周りにいます。
また保育園に行って同じように働いているママがそれぞれ自分の中で折り合いをつけながらやっているのを見ると「私も頑張ろう」と思えていい刺激になります。悩んでいるんだったら一歩踏み出していいと思います。
ん〜ただ…両立っていう言葉はやめた方がいいと思うんですよね。

日高:プレッシャーだよね!

藤田:そうなんですよね。仕事も育児も精一杯やっている中で、育児の正解なんて全く分からないし、仕事にも終わりがないと感じています。両立っていう言葉だとどちらも完璧にやってないと両立って言えない気がしてしまいます。

薮:さきほど仰っていた「折り合いをつける」という言葉の方が当てはまるのでしょうか?

藤田:そうですね、子育てをして成長したことの一つですね。母親という役割が増えて中途半端にするということではなく、前向きな意味でバランスを意識するようになりました。
ある程度自分の中のルールで消化していかないと不平ばかり溜まります。「私はこれでいいんだ」と思いながらでないとやっていけないっていうのはあるかも知れないですね。

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日高:私も子育てしている時に上司に「いくら頑張っても80くらいしかできない…」と相談したことがあって、上司が「何言っているんだ。育児もやりながら仕事も100出来ると思うか?自己満足の為に仕事やっているのか?周りが100って認めていたらそれでいいんだ」と言われて私の80でも100に見えていることが分かってとても楽になりました(笑)
朝エレベーターホールに立った瞬間に「仕事だ!」という切り替わりがあることでストレスが少なくなると感じます。色々な役割があるからこそストレスが減るかも知れませんね。

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藤田:仕事と育児は周りの方々がいないと本当に成り立たないです。夫をはじめとして、会社の方々、子どもにもサポートしてもらっています。色々な方々に感謝の気持ちを持って仕事をしています。

色々な役割を持った自分で、自然体で

日高様の方からも女性が活躍する社会に向けて大切なことについてメッセージを頂けますか?

日高:肩肘張らずに自然体で仕事も育児も行うことが大事だと思います。親としての役割もあると思いますが、妻として、子どもとしての役割もあり各々でバランスをとりながら自分らしく生きていけばいいのかと思います。

藤田:とても共感します。この間の研修にも「自分の役割を考える研修」というものがあった時 に子どもの役割を担っているのをすっかり忘れていました。

日高:時には「子ども」の自分を思い出して母親に甘えていいと思います。多面的な自分だからこそ人間として成長出来ると考えています。

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編集後記

「仕事と育児の両立」という言葉では完璧に育児も仕事もこなしてしまうママを想像してしまいますが、実際のママ社員の日常はたくさんの業務に追われる日々で、どこかで折り合いをつけて生活していっているかと思います。帝人株式会社のように社員の色々な役割の理解と配慮に取り組むことで、個人がより力を発揮出来る職場が出来ていくのではないでしょうか。

(インタビュアー:イクシル編集部 藪 / 編集:イクシル編集部 福井)


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