不妊治療

不妊治療に有効と思われるPGDが普及しないのはなぜ?

体外受精後に出来た胚について、染色体異常などが無いか調べて流産を防ぐ「PGD(着床前診断)」という検査があります。しかし、PGDは日本ではあまり普及していないようです。その理由について専門家達に尋ねてみました。

PGDについての相談:「PGDが受けられる病院が少ないが、今後普及する見込みは?」

体外受精経験者でPGDに興味がありますが、日本では認可されている病院が少ないようです。受精卵を作って陰性が続く時の辛さや、染色体異常における化学流産等を避けることが出来るのになぜ普及しないのでしょうか?日本は不妊治療の妊娠率が低いといわれていますが、母体に負担がかからないこの方法が普及しない理由が分かりません。どこの病院でも受けられる状況にはならないのでしょうか?(30代・女性)

遺伝子疾患により習慣性流産になっている人が対象

PGDは、遺伝子構造の異常や遺伝子疾患により習慣性の流産になっている人が対象となっているようです。日本産科婦人科学会にて承認が得られた場合のみ可能な検査で、誰もが受けられる訳では無いそうです。

PGDは着床前診断のことで、受精卵が胚盤胞前後まで成長した段階で遺伝子や染色体を解析して正常かどうか診断します。着床前診断を行うにあたり、日本産科婦人科学会では原則として「重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある、遺伝子変異や染色体異常を保因する場合」「重篤な遺伝性疾患に加え、均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣性流産になっている場合」と厳しい条件を設けています。(産科看護師)

線引きが難しい着床前診断

PGDには、デメリットもあります。一つ一つの遺伝子の確かな役割が分かっていない中で選り分けるのは難しく、遺伝子の役割についてもわかっていないことが多いようです。

着床前診断は、生命倫理学的に重要な問題と関係しています。それは、遺伝子異常または染色体異常がある場合に、どのような基準で胚を選択するのかということです。過去から現在まで含め、全く遺伝子異常の無い人は存在しません。ある一つの遺伝子変異が異常かどうかを決めることは出来ても、どこまでが正常なのかについては判断が難しく、その線引きが出来る人はいないのです。(医師)
一つの遺伝子異常が正確にどのような病態を引き起こすか、または何も起こさないのかについてもよく分かっていません。ヒトゲノムは既に解明されていますが、果たしてその中の一つ一つの遺伝子またはそれに関連する物質が、どのような役割を果たしているかについてもほとんど分かってはいません。PGDは非常に慎重な議論を要する分野であり、日本は規制が厳しい国ですし普及するにはかなり時間がかかるでしょう。(医師)
PGDに厳しい条件を設けたのは、宗教的な問題や倫理的問題があるためです。検査をして受精卵を選ぶということは命を選択することになり、もしかすると順調に育ったかも知れない受精卵を駄目にする場合もありえます。メリットもありますが命に関わることなので、そう簡単には普及しないのではと私は考えます。(産科看護師)

PGD(着床前診断)は、倫理的観点から判断が非常に難しいため、普及するには時間がかかるようです。認定病院がまだ少ないのが現状であり、定められた条件に該当する人だけが受けることが出来るようです。


2017/04/29

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