妊娠糖尿病

2017/08/21

妊婦の8人に1人がかかる!?「妊娠糖尿病」とは

この記事の監修/執筆

Mocosuku編集部

妊婦の8人に1人がかかる!?「妊娠糖尿病」とは

それまで糖尿病の診断を受けたことのない人でも、妊娠中に「妊娠糖尿病(Gestational Diabetes Mellitus、GDM)」を発症することがあります。
どのような病気なのか、また、お腹の赤ちゃんには影響があるのかどうか、詳しく解説していきましょう。

糖尿病と妊娠糖尿病の違い


日本糖尿病・妊娠学会によると、妊娠糖尿病とは「妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常である」と定義されています(※1)。
そもそも糖尿病とは、食後に上昇する血糖値を下げる働きを持つインスリンが、作用を低下したり分泌量を減少することによって、糖の代謝に異常が起こり、血糖値の高い状態が続いてしまう病気です。
その原因は、1型糖尿病か、2型糖尿病かによっても異なりますが、多くの方がイメージするように、2型糖尿病の場合は、食事や運動不足などの生活習慣も発症に大きな影響を与えます。

一方、妊娠糖尿病の場合、その発症には妊娠中に分泌されるホルモンが関係しています。
妊娠すると、卵巣や胎盤からさまざまなホルモンが分泌されます。これらのホルモンは赤ちゃんが安定して育つために必要なものですが、中にはすい臓から出るインスリンの働きを抑制する作用を持つものがあります。
そのため、このようなホルモンが増える妊娠後期は、妊娠糖尿病になりやすいのです。
実際、妊婦さんの8人に1人(12.08%)は妊娠糖尿病になるとされています(※2)。
※1:一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会『妊娠中の糖代謝異常と診断基準(平成27年8月1日改訂)』(http://www.dm-net.co.jp/jsdp/information/024273.php
※2:同上『糖尿病と妊娠に関するQ&A』(http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/c/q01/

妊娠糖尿病になりやすい人

しかし、すべての妊婦さんが妊娠糖尿病になるわけではありません。
通常、ホルモン分泌によってインスリンが抑制気味になる時期には、ふだん以上にすい臓からインスリンを多く分泌して血糖値を上げないように調節する働きが備わっているからです。
ところが、何らかの原因でこの調整機能がうまく働かないと、血糖値が上昇し、妊娠糖尿病になってしまうと考えられています。
とくに次の因子は発症に関係しているのではないか、といわれているものです。

・肥満である
・高齢出産(35歳以上)である
・糖尿病の既往歴がある家族がいる
・尿糖が陽性となることが続いている
・妊娠高血圧症候群である、もしくは既往歴がある
・羊水過多といわれている
・流産や死産、早産の経験があり、原因がわからないといわれたことがある
・過去に大きな赤ちゃんを出産している
(参考:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター『妊娠と妊娠糖尿病』(https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/bosei-jsdp.html))

妊娠糖尿病の診断基準

妊娠糖尿病の診断は、「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」の検査結果を用いて行います。検査の結果、次の1つ以上を満たす場合に、妊娠糖尿病と診断されます。
・空腹時血糖値 ≧ 92mg/dl (5.1mmol/l)
・1時間値 ≧ 180mg/dl (10.0mmol/l)
・2時間値 ≧ 153mg/dl(8.5mmol/l)

(参考:一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会『妊娠中の糖代謝異常と診断基準(平成27年8月1日改訂)』(http://www.dm-net.co.jp/jsdp/information/024273.php))

先に述べたように、妊娠糖尿病は妊娠中にはじめて発見・発症された糖代謝異常のことをいいます。
そのため、糖尿病に至っている場合は、「妊娠中の明らかな糖尿病」と呼ばれ、区別されます。
また、妊娠前から糖尿病を発症していた場合は「糖尿病合併妊娠」と呼ばれ、妊娠糖尿病には該当しません。

妊娠糖尿病の危険性は?

妊娠糖尿病を放っておくと、次のようなリスクがあります。

母親へのリスク

・妊娠高血圧症候群
・感染症の併発
・流産や早産
・帝王切開
・羊水過多
など

胎児へのリスク

・巨大児(帝王切開になる確率が高まる)
・奇形児
・肩甲難産(胎児の肩が産道にぶつかるため)
・子宮内胎児死亡・発育遅延
など

新生児(誕生後)のリスク

・新生児低血糖
・高ビルビン血症(血液中のビルビンの値が増えすぎて、黄疸の症状が現れる)
・低カルシウム血症(血液中のカルシウムが減る)
・多血症(血液中の赤血球が増える)

このほかに気をつけたいものとして、「劇症1型糖尿病」があります。重症化しやすく、放っておくと死に至ることもある危険な病気です。
確率自体は高くありませんが、妊娠をきっかけに発症する女性が多いといわれています。

妊娠糖尿病の症状と注意点

妊娠糖尿病は初期の自覚症状があまりありません。
ただし、進行すると、喉が渇いて水を大量に飲む、大量に尿が出る、疲れやすいなど、通常の糖尿病と似たような症状が現れます。
妊娠中は健康であってもいろいろな変化が起こりやすいため、これらの症状があっても妊娠糖尿病かどうかを自分で判断するのは難しいでしょう。だからこそ、気になる症状がある場合には、受診時に伝える習慣をつけておきましょう。
また、とくに先に述べた発症因子に該当する人は、食事に気をつけましょう。
妊娠後期はふだんよりもエネルギーの摂取量が増えますが、1度にたくさん食べると、食後の血糖値が上がりやすくなります。
そのため、おやつの時間をとるなどして、食事の回数を分けるのも方法もひとつです。
ただし、その場合は、1日の摂取カロリーの合計量が増えすぎないように注意する必要があります。

また、体重も目安のひとつとなります。
妊娠中の適正な体重増加量は、妊娠前の体格(BMI)によって異なります。個人差はありますが、とくに肥満(BMIが25以上)の人は体重の増加を5㎏以内に抑えるようにし、適正な範囲を超えている場合は、主治医に相談しながら、運動も取り入れましょう。
妊娠糖尿病と診断された場合は、産後にも検査が行われます。
また、ある程度経ってから糖尿病を発症することがあるため、経過観察も必要となります。楽しく育児をするためにも、産後の体調にも注意したいですね。
【参考】
・国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター『妊娠と糖尿病』(http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/080/030/13.html
・公益社団法人 日本産婦人科学会『妊娠糖尿病』(http://www.jsog.or.jp/public/knowledge/ninshintonyobyo.html

<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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