産後の肥立ち

2015/05/12

薬剤師さん教えて!産後のダメージを和らげる漢方とツボ

この記事の監修/執筆

薬剤師髙橋 公子

薬剤師さん教えて!産後のダメージを和らげる漢方とツボ

出産後は身体がもとの状態に回復しようとするため、痛みや不快な症状を感じることが多くなります。しばらく安静に過ごすのが一番ですが、赤ちゃんの慣れないお世話もあり、精神的に不安定になってしまうことも。そこで今回は、産後の不快な症状を和らげる4つのポイントについて、薬剤師で鍼灸師の髙橋さんに教えてもらいました。

■産後の不快症状を軽減する4つのポイント

出産後、母体に見られる主な症状は、大きく膨らんでいた子宮が元の大きさに戻る子宮復古や、子宮の収縮時に起きる後陣痛、傷ついた産道や子宮から出血を含んで排出される悪露(おろ)などです。同時に、母乳が乳腺内に溜まることが原因で炎症を起こす乳腺炎、気分が不安定になる産後うつ、便秘や腰痛などに悩む人も多くいます。これらの症状を軽減するため、心がけたいポイントを以下にまとめました。

1.意識して安静に過ごす
昔からよく言われることですが、とにかく産後は安静が大事です。産後1カ月ぐらいはなるべく横になるようにして、ゆったり過ごした方が経過が良いと言われています。自分で元気だと思っても過信せず、意識して身体を休めましょう。
2.精神的に不安定な時期を受け入れる
健康な時とは違って、産後は精神状態も不安定になりやすい時期です。普段なら気にならない些細なことでも過敏に反応し、涙が出てきてしまうことも。さらに、2~3時間おきに昼夜関係なく授乳が続くなど、自分の体調もままならない中で赤ちゃんのお世話をするのはストレスが溜まります。しかし、不安な気持ちを募らせるのは悪影響です。やがて赤ちゃんとの生活にも慣れ、精神的に落ち着く時期が来ます。不安定な時期は一時的なものと自分でも理解し、心配し過ぎないようにしましょう。
3.家族の理解を得る
身体を休められるよう、家事はなるべく家族などに協力をお願いしておくと良いでしょう。また精神的にも不安定になりやすい時期だということを家族にも伝え、周囲の理解を得ておくと安心です。
4.清潔を心がける
出産した後の子宮や、産道はとてもデリケートな状態です。しばらくは悪露が出続けますが、清潔に保って産褥熱を防ぐようにしましょう。

■産後の不快症状を和らげるオススメの漢方3選

産後特有の不快症状を和らげるオススメの漢方をご紹介します。紹介するのは授乳中に服用しても問題ないといわれている薬ですが、必ず、担当医に相談してから使うようにしましょう。

1.貧血や悪露がひどいとき:芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)


芍薬(シャクヤク)

産後に失われがちな血を補う当帰(トウキ)と芍薬(シャクヤク)、血のめぐりを良くする桃仁(トウニン)、紅花(コウカ)を配合。出産で血液が失われているだけでなく、母乳でも血液が必要となるので貧血気味の人に向いています。いつまでも悪露が出続けている場合にも有効です。血のめぐりを良くすることで、悪露の排せつも促されます。

2.精神的に不安や体力の消耗が激しいとき:補中益気湯(ほちゅうえっきとう)


黄耆(オウギ)

補中の「中」とは胃腸のことで、胃腸の働きを良くして元気を増す薬です。疲れているときに良いとされ、滋養強壮作用の強い朝鮮人参と黄耆(オウギ)が配合されています。体力を戻すことで気力を復活させる効果も期待できます。

3.母乳の出をよくする:十全大補湯(じゅうぜんだいほどう)


桂枝(ケイシ:シナモンのこと)

初乳には赤ちゃんの免疫を高める効果があるだけでなく、母乳を飲ませることはママの産後の身体の回復にもつながります。赤ちゃんが母乳を飲む際の乳首への刺激によってオキシトシンというホルモンが分泌され、母乳が出やすくなるだけでなく、出産で大きくなった子宮を収縮させる作用があるからです。
母乳はお母さんの血液から作られます。産後は血液不足やめぐりが悪くなりがちなので、気血を補う漢方がよいでしょう。十全大補湯には、気(エネルギー)を補う桂枝(ケイシ:シナモンのこと)と黄耆(オウギ)が含まれるほか、血を補う当帰(トウキ)を含む四物湯(シモツトウ)がベースに含まれています。シナモンアレルギーの方は服用に注意が必要です。

そのほか、民間療法になりますが、乳腺炎の予防には牛蒡子(ごぼうし:ごぼうの種)を煎じたもの5gくらいを200mlの水で45分煮詰めて飲んだり、炒ってぽりぽり食べると良い、と言われています。

9877_L_4
牛蒡子(ゴボウシ)

また、おっぱいのもとになる血液がどろどろしていると乳腺がつまりやすくなるので、さらさらになるよう水分をしっかり補給してください。発熱しそうな感じがしたら、葛根湯を服用するのも一つの方法です。

■産後のダメージを和らげる6つのツボ

ツボを指圧するときは、入浴中かお風呂上りが効果的です。呼吸に合わせてゆっくりと、息を吐きながら押し、吸いながら離すのがコツ。カイロでツボを温める方法もあります。お灸は入浴の前後30分は皮膚がやけどしやすい状態になっているので避けてください。熱すぎるときは無理せず外してください。

>>ツボの指圧方法やお灸などの治療器具について、詳しくはこちらをご覧ください。

それでは実際に、産後の体調を整える6つのツボを刺激してみましょう。

関元(かんげん)


関元は丹田とも呼ばれ、おへそから指4本分下に位置し、子宮の状態を元に戻す作用があります。デリケートになっている子宮を刺激しすぎないよう、優しくさするようにしましょう。

腎兪(じんゆ)


腎兪は東洋医学的には生命の根源と考える「腎気(※)」を補うとても大事なツボで、産後に落ちている子宮のエネルギーを補うのに効果があります。場所は腰に手を当てたとき、親指があたるところ。背骨に向けて押すと効果的なので、優しく押しましょう。産後の腰痛解消にもオススメです。

次髎(じりょう)


下腹部の血行改善や腰痛緩和、ホルモンバランスを整えるツボ。仙骨(脊柱の下側、尾骨の上)の中央から、左右にやや外側の少しくぼんだところにあります。お尻の割れ目の一番上から指1本分外側と覚えましょう。両手親指で骨に向かって押すと効果があるほか、冷えないようにカイロで温めるのもよいでしょう。

膻中(だんちゅう)


身体の中心と乳首を結んだ線が重なるポイント、胸の真ん中にあるツボです。心を落ち着かせ、母乳の出を良くする作用があります。

天宗(てんそう)


肩甲骨のほぼ中央、腕のつけ根に近い骨が薄くなってくぼみんでいるところにあるツボ。母乳の出をよくします。

百会(ひゃくえ)


頭のてっぺん、両耳と鼻の延長線が交わる点にあるツボ。産後、痔になった場合は百会にお灸します。お灸はカマヤペットなどの広範囲を温められる棒灸で5分ほど温めます。頭皮を露出させるように髪の毛を押さえて、人にやってもらいましょう。

妊娠、出産という大きな変化を経験した母体は想像以上にダメージを受けています。精神的にも不安定になって当たり前なので、この時期は意識して心身の回復に努めるに越したことはありません。ご紹介した漢方やツボを効果的に取り入れて、少しでも楽に過ごせるよう工夫してみてください。

(※)腎気とは……漢方医学でいう「腎」とは内分泌系、泌尿・生殖器系、免疫系、中枢神経系の機能の一部のことを指し、腎にある精気を「腎気」といいます。加齢とともに腎気が衰えてくることで、それらの機能が低下すると考えられています。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加